麗雪神話~幻の水辺の告白~
「この世界は、不変ではない。
そういうことだよ。
天上界に神々がいて、人間界に人間たちがいて…と、ずっとそのままではないのだ」

「ずっとそのままではない、って……どういうことだ。
それじゃあ一体、どうなってしまうっていうんだ」

「さあな」

またいつもの意味深な笑いを浮かべる皇帝を見て、サラマスは彼がこれ以上の情報を自分に与えるつもりがないことを悟った。

ならば今手に入れた情報だけでも、吟味したい。

(ずっとそのままではない。
神がいて、人間がいて……その世界の不変の均衡が、崩れるって言いたいのか?)

そんなばかなことがあるはずがないではないか。

しかしそれが、“世代交代”だと、レコンダムの台詞からは読み取れる。

「…………」

サラマスが思わず黙り込んでいると、飲み物を手にプラトーが幕舎に戻ってきたので、話はお開きになった。

(こいつ、何を企んでいる…?)

そんな世界の均衡が崩れる程の大きな世代交代とやらが本当に行われるとしたら、レコンダムだって今の立場が危うくなるだろうに。なぜこれほどまでに余裕の表情なのだろうか。

絶対に何か企んでいる。サラマスは確信した。

そして頃合いを見て早々にここを立ち去らなければ、サラマスまでその陰謀に巻き込まれてしまうことも。
< 116 / 174 >

この作品をシェア

pagetop