麗雪神話~幻の水辺の告白~
サラマスが悩んでいると、聞き捨てならない内容の会話が耳に飛び込んできた。

「して、ヴェインよ、“飛天の能力者”探しはどうなっている?」

「申し訳ございません。今のところ、手がかりすら得られておりません」

(―――! “飛天の能力者”だって!?)

それは、サラマスがこの地上に降りてきた目的だった。

人間の中に生まれ落ちる、特別な力を持った存在、“飛天の能力者”。

サラマスは水の神ディーネリアに、その人間を捜し、守るようにと頼まれたのだ。

「世代交代に、“飛天の能力者”は不可欠だ。
引き続き、捜すように」

「…かしこまりました」

(飛天の能力者は、世代交代と関係があるっていうのか)

サラマスは無言で考えを巡らせる。

サラマスはディーネリアから、飛天の能力者さがしの役に立つアイテムを授けられている。このことをあえて皇帝たちに教える、というのはどうか。

(そうすれば能力者捜しは格段に効率よくなる。協力的だと思わせることもできる。奴らが彼をどうするつもりかわからない以上これは賭けだが、みつけたあとでならどうとでも守れる自信がある)

サラマスは決断を下した。

「おい、皇帝。“飛天の能力者”を捜しているなら、いいものがあるぜ」

「?」

一斉に、一同の視線がサラマスに向く。
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