麗雪神話~幻の水辺の告白~
「俺も実は飛天の能力者を捜していてな。このブレスレット。これを装備することができる特別な人間、そいつが“飛天の能力者”だと、水の神から聞いている」

「なんだと」

皇帝は値踏みするような視線をサラマスに向けた。

サラマスはなるべく堂々と、後ろ暗いことなどないようふるまった。

「俺の出す条件を飲んでくれるなら、このブレスレットを貸してもいい。王宮にでも置いて、触れを出すといいだろう。このブレスレットを装備できたものに、報奨金を与えるとでも言えば、人が集まり、その分見つけやすくなる」

皇帝はしばし思案深げに瞳を伏せていたが、不意ににやりと笑った。

何か面白いものを見つけた時の、子供のような瞳をしている。

「ほう…面白い。その話が本当なら、悪い話ではないな。
して、そなたの出す条件とは?」

「俺に、あんたの知っている情報をすべて教えてくれることだ。世代交代について、たくらみについて、ヴェインについて」

ここは欲張る場面だった。

サラマスは知りたいのだ。そのためにここにいる。交換条件として、これほど重要なものはない。

しかし、相手がこれを呑んでくれるかは正直言ってわからなかった。

呑んでくれなければ、それはそれでいいと、サラマスは思っていた。

その時は皇帝から離反し、狩猟祭の日に開くと言われる天への扉を通って、いったん天上界に帰る。そして新たに情報を得て、改めて能力者を捜せばいい。
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