麗雪神話~幻の水辺の告白~
ぼんやりと、やはりディセルのことを考えながら、野営地の近くの河川敷を歩く。

月の見える適当な場所に、セレイアは座った。

そよそよと、夏のようなこの国のあたたかい夜風を受けていると、気持ちがいい。けれど、セレイアの思考はまたディセルのことへと流れていく。

もう終わったことなのに、どうしよう、とまた考えてしまう。

セレイアがぼーっと川の流れを見つめていると、急に背後から声をかけられた。

「セレイア」

この声はディセルだ。

そう認識した瞬間、セレイアは弾かれたように立ち上がっていた。

セレイアは反射的に逃げ出そうとしたが、果たせなかった。

ディセルに、強く腕をつかまれていたからだった。

思わず振り仰ぐと、月明かりに照らされる美しい顔を、至近距離でまともに見上げる形になってしまった。

かっと、どうしようもなく顔が熱くなる。

多分真っ赤になっているだろうけれど、夜闇がそれを隠してくれていることを願った。

目の前のディセルはひどく困ったような表情をしていた。
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