麗雪神話~幻の水辺の告白~
その夜、宿の一室で、四人は今後のことを改めて話し合った。

「戦争に霧が使われているって…本当かしら。だとしたらその陰には…」

「―ああ…。ヴェインがいるだろう。間違いない」

ディセルが硬い表情で頷く。

ヴェインは霧を操る謎の少年で、今までに幾度も、ディセルやセレイアの命を狙ってきている。その素顔はいつも半分仮面で隠しているが、サティエイトで一瞬垣間見たところ、ひどく焼けただれていたようだった。なぜそんな怪我を負ったのか、気になるところだが、それよりなにより、彼が裏で手を引くと、ろくなことにならないのは、経験から実証されている。アル=ラガハテス部族王国のアル=ハル族補佐役カティリナを口車に乗せ、トリステアを乗っ取ろうとしたことは、まだ記憶に新しい。

「戦争の指示を出しているのは、当然、この国の王様なんだろう? なんてやつなんだ?」

サラマスの疑問には、セレイアが答えた。

「私も詳しいことは知らないのだけど…現国王は確か、レコンダムっていう名前よ。ひどく好戦的な王さまで、彼が王位についてからの14年間で、近隣諸国が次々と併呑さてしまったと聞いているわ。トリステアも、この国をとても警戒していた」

「そんな好戦的な王様なら、目的のためにヴェインと手を結んでも、おかしくないってことだね…」

シルフェがしみじみと呟く。

「まだ決まったわけじゃ…」

セレイアとしてはどこの国の王だとしても、それなりの王でいてほしいと思っているので、わずかに弁護しようとする。が、その声は尻すぼみだ。焚書を見ているのだ。王の人柄など知れたようなもの。
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