麗雪神話~幻の水辺の告白~
屈み込んで花を手折りはじめたので、シルフェも好きにさせてもらうことにした。

花畑の真ん中に腰掛け、う~んと伸びをする。

人間界にもこんなにきれいな場所があるなんて、降りてくるまでは知らなかったことだ。

見上げる空は高い。

思わずぼーっと天上界のことを思い出していると、不意に目の前にずいっと何かが差し出された。

ボリスの手だ。

その手には、花でできた小さな指輪が載せられている。

「―これをお前にやる」

「え?」

シルフェは大いに戸惑った。

小さいけれど、花を中央に、土台は茎や葉を使ってじょうずに編まれた素晴らしい指輪だ。

「どうして?」

思わずそう聞いてしまった。

「別に特に理由はない。おい、俺様からのプレゼントが受け取れないのか?」

じろりとねめつけられ、シルフェは肩をすくめた。

―もう少し素直な言い方があるだろうに。

けれど、シルフェの方こそ素直になるべきかも知れない。

だってシルフェは、とても嬉しかったのだから。

「ありがとう! ボリス。大切にするわね」

笑顔を向けると、ボリスはぷいっとそっぽを向いてしまった。

カワイイ、とまた思った。
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