麗雪神話~幻の水辺の告白~
(よかった…今日はボリスも楽しんでいるみたいで。少しは気持ち、晴れたかな)

シルフェがそう思ったのには、理由がある。

最近、ボリスが何かにひどく悩んでいるようすだったからだ。

何に悩んでいるのかはまったくわからない。

だが時々すごく辛そうな、悲しげな眼をしてシルフェを見るのだ。

子供たちとの触れ合いで、心が慰められたならいい。

が、そう思った矢先だった。

シルフェが手元の指輪から顔を上げると、ボリスがまたシルフェを、例の辛そうな顔でみつめていたのだ。

そんな顔で見つめられると、シルフェまで辛くなってくる。

思い切って、シルフェは聞いてみることにした。

「ねえボリス、最近何を悩んでるの?」

ボリスは瞠目し、息を止めた様子だった。

気付かれていないと思っていたらしい。

「私に気付かれてないと思っていたら、大間違いよ。
何か助けになれることがあるかもしれないから、もしよかったら話してみて」

おせっかいかも知れないとは思ったが、何か手伝いたいのも、正直な気持ちだ。

ボリスはうつむき、視線を泳がせた。

「それは……できない」

その唇からは、短い否定の台詞が紡がれる。けれどシルフェにはわかった。本当は聞いてほしいのだということが。

共に過ごした時間で、それくらいのことはわかるようになっていた。
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