麗雪神話~幻の水辺の告白~
「シルフェ、お前は俺の後ろに隠れていろ。
俺が戦う」

「…一人でっ!?」

「それしかないだろうがっ! 行くぞ!」

ボリスがシルフェの手をつかみ、裏口から飛び出していった。

再び飛来する矢の雨。

ボリスは巧みに剣を操ってほとんどの矢を防いだが、二、三本は防ぎきれずに彼の腕に突き刺さった。

「……っ」

うめき声を殺しているのがわかる。シルフェを心配させないためだ。

(ボリス…!!)

敵の数は、ざっと見ただけでも、十数人はいた。鎧の紋章からいって、レコンダムの手の者だとわかる。

多勢に無勢とはこのことだ。

しかも、ボリスは怪我を負っている。

まともに戦って、勝ち目があるとは思えない。

(どうしよう…!)

シルフェも戦いたいが、武器がない。

次の矢が、引き絞られている。それなのにボリスは逃げようとせず、シルフェをかばうように体を動かした。
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