麗雪神話~幻の水辺の告白~
空を飛んでいる間に、ボリスは気を失ってしまったようだった。

コルッツォの医者に診せ、丁寧に治療をしてもらったあとも、目覚める様子はなかった。

しかし寝息は規則正しく、汗などもかいていないようで、熱はないようだった。医者は、しばらくすれば目を覚ますだろうと、シルフェに優しく言ってくれた。

小さな病院の一室で、ボリスのベッドサイドに椅子を置いて腰掛け、シルフェはボリスの寝顔をじっとみつめていた。

眠るつもりはなかった。

ボリスが目覚めた時、すぐに今の状況を説明して安心させてやりたかったから。

改めて、この人はなんて危険なことをしているのだろうと思う。

今日のような出来事は、きっとこれからもある。

その時どうやって、身を守るつもりだろう。

風の力を取り戻した今のシルフェならば、彼を守りきることもできるだろう。

けれど。

(私は、ずっとそばにはいられない)

ずっとどころか、期限はすぐそばまで迫っている。

シルフェは天上界へ、帰らなければならないから。
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