麗雪神話~幻の水辺の告白~
「……う………ん……」

シルフェの物思いを断ち切るように、ボリスがうめき声をあげた。

はっとして、シルフェは身を乗り出した。彼をのぞきこむ。

「…ボリス?」

「う……しる、ふぇ…?」

ボリスの瞼がゆっくりと開いた。そしてその瞳の焦点が、シルフェに合う。

「ボリス! よかった、気が付いたのね」

安堵のため、思わず花が咲くような笑顔がこぼれる。

ボリスはそれを、まぶしげに見ていた。

「シルフェ…ここは…?」

「コルッツォ村の病院よ。ちゃんと手当してもらったから、怪我のほうはもう大丈夫。
しばらく安静にしてなきゃだめだけどね」

「俺を…助けて、くれたんだな…」

普段俺様なボリスがしみじみとそんなふうに言うから、シルフェは焦った。

「そんなたいそうなことはしてないわよ…あっ、ちょっと、だめよまだ起き上がっちゃ」

「大丈夫だ。怪我したのは腕だけだから」
< 148 / 174 >

この作品をシェア

pagetop