麗雪神話~幻の水辺の告白~
ボリスは切なげに眉根を寄せて続ける。

「でもだめだ…できっこない……俺は」

不意に、ボリスの腕が伸びて来て、シルフェの体を抱きしめた。

片腕だけだが、それは強い抱擁だった。

その抱擁の意味するところがわかったような気がして、シルフェはとまどう。

「ボリス…?」

彼の気持ちを確かめるために、その顔を見たいと思ったが、力強い腕がそれを許してはくれなかった。

「シルフェ、お前は本当に、神なのか…?
お願いだ、ただの娘であってくれ。
だって、俺はお前を…………」

その続きを、シルフェは言わせたくなかった。

わかってしまったから。

その声の帯びる熱で。

わかっているくせに、自分でもずるいと思う。

それでも言わせたくなくて、聞きたくなくて、シルフェはボリスの声を遮った。

「私は神よ、ボリス。
人間じゃない……」
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