麗雪神話~幻の水辺の告白~
レコンダムはサラマスに心を許した風にふるまってはいるが、その実監視を怠ったことがない。今も、部屋の外には数名の兵士がおり、サラマスの動向を見張っている。しかし夜にはその監視が一名だけになるのは調査済みだった。

(抜け出すなら夜だな……そうだ、ブレスレットも返してもらわないと)

部屋の扉から出ると監視たちがうるさいので、サラマスはバルコニーに這った蔓草を伝って、こっそり部屋を抜け出した。最近はこの方法で、あちこちから情報を集めているのだ。しかも、盗んでおいた護衛兵のお仕着せに身を包んでいる。制帽までしっかりかぶってうつむきがちに歩けば、まずサラマスだとばれることはない。

ブレスレットを公開している主宮殿へ向かおうと、サラマスは庭園を突っ切って歩いた。

しかし歩いているうちに、主宮殿に着くどころか、どんどん遠ざかり、だんだん庭の奥の奥、人気のない場所までやってきてしまった。

(やべぇ…道に迷った…?)

サラマスが内心焦っていると、近くで人の声がした。

これ幸いと道を聞こうとして、はっと気づく。

この声は、ヴェインだと。

サラマスはそう気づいた瞬間、草むらに身を潜めていた。
< 154 / 174 >

この作品をシェア

pagetop