麗雪神話~幻の水辺の告白~
その時、「おっと」とヴェインが槍を背後にまわした。

ギン、と金属音が鳴る。

いつのまにかヴェインの背後に迫っていたサラマスが、短剣でヴェインの心臓を一突きにしようと攻撃を繰り出していたのだ。

風の刃は注意を引き付けておくための攻撃だった。

しかし―――外したか。

「小賢しい真似をしてくれるじゃない? ずいぶん古典的な方法だね、神様のくせに」

これでヴェインは背後への警戒も強めてしまった。もう同じ攻撃は使えない。

次の攻撃を探っていると、不意にシルフェの首もとで紫色の霧が凝縮しはじめた。

「……なに!?」

と思った時にはもう遅かった。

霧はリングのようにシルフェの首を囲み、ぎりぎりと締め付けてきた。

「一瞬で首を真っ二つにするより、じりじりと窒息してもらったほうが、面白味があるよね」

霧のリングがさらに強く締め付けてくる。

息ができない……!

「シルフェ…!!」

サラマスの悲痛な叫びが聞こえる。

「ぐ………!」
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