麗雪神話~幻の水辺の告白~
シルフェは必死で頭を働かせた。

このリングは、どんな強度を持っていようと、霧でできたものだ。

(なら……!)

シルフェは風に念じ、首とリングとの間のわずかな空気を、一気に膨張させた。

ぶわっと風が踊る。

内側から、外側へと向かう強い風の力。

その力に耐え切れず、霧のリングが粉々に砕け散った。

シルフェは一気に酸素をとりこみ、はぁはぁと息をついた。

「大丈夫かシルフェ!」

サラマスがシルフェの隣に駆け寄ってきた。

「うん…なんとか。それより、どうにかして隙をつくらなきゃ」

ぼそぼそと、サラマスとシルフェは作戦を相談し合う。

「何のんきに相談なんかしてるわけ? ふ、こっちから行かせてもらうよ!」

ヴェインが槍を手に二人へと突っ込んできた。

サラマスに繰り出された鋭い突き攻撃を、彼は短剣を当てて軌道をそらしながら、なんとかかわす。

相変わらずヴェインの槍技は、ばかみたいに精錬されていた。

隙をつくるため、シルフェは風を刃にするのではなく、団子のようにして、ヴェインの足元に放った。

これで転ばせられれば――――。

不意に足元をすくわれ、ヴェインは一瞬驚いたような顔をしたが、そのまま宙に飛び上がった。

…そうだった。彼はどういう力でか、風の神でもないのに空を飛べるのだった。

この攻撃で、逆にシルフェの方に隙ができてしまった。
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