麗雪神話~幻の水辺の告白~
「セレイアにスノーティアスか。邪魔者が次から次へとわいてくるな」

ヴェインがそう吐き捨てる。

セレイアはシルフェとサラマスの前に立ちはだかると、ざっと長槍を構えてヴェインを睨みつけた。

「やっとみつけたわヴェイン。あなたは、災いしか呼ばない! あなたを、ここで討つ!」

「俺たち四人を相手にして、今まで通りいくかな、ヴェイン」

ディセルが彼らしくなく、そう不敵に告げた。

―一方。

ボリスは皇帝レコンダムと一対一の、熾烈な戦いを続けていた。

「誰かと思えば、死にぞこないの坊主ではないか。
お前の師、グレフの死に様は、無様だったなあ。
体中、串刺しにされて。ふははは」

「くっ……師匠を侮辱することは、許さない!!」

レコンダムには余裕がある。そしてボリスには、余裕が一切ない。

敬愛していた師グレフを殺した仇を目の前にして、余裕でいることなどできなかった。

憎しみで胸がちりちりと焼かれそうだ。

「今度こそ、俺が、師匠の仇をとる!」

叫びざま、ボリスは一気に斬り込んだ。

踏み込みも、斬撃も、脇を適度に締めているから隙をつくらない、グレフから教わった、基本をしっかりとふまえた攻撃だった。

しかしその強力な攻撃を、レコンダムはふっと肩の力を抜くようにしてかわしてしまう。

その余裕の微笑みが憎たらしい。

ボリスは立て続けに剣を振り、薙いで、叩きつけた。

ガキィィィン!

レコンダムの剣が、それらの攻撃すべてを受け止める。

動きが読まれているのか、と思うほど完璧に。
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