麗雪神話~幻の水辺の告白~
(これで終わり―――)

長いような短いような旅だった。

自分の心の叫びを、セレイアはこの時確かに聞いた。

行かないで、と。

どうしようもなく心は叫んでいた。

(この気持ちは…もしかして、私、ディセルを―――――)

どうしてこんな別れ際に、気づくのだろう。

ばかみたいだ………。

涙で視界が滲んで、必死に見上げているはずのディセルの表情がわからない。

ちゃんと見ておきたいのに、わからない。

「セレイア……」

不意にディセルがセレイアの方を向いた。

静かな声音だった。

さよならを言われると、そう思った。

それはきっと、絶望的にセレイアの胸に響くのだろう…。
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