麗雪神話~幻の水辺の告白~
作戦当日。

「作戦前に、これをスノーティアスに渡しておくね」

シルフェがディセルを呼び止め、何かをすっと差し出した。

「これ…天上界へ行くときに使う、大切なペンダントだろう? 夜の虹の光を集めなきゃいけないっていう…。俺が持っていて、いいの」

この作戦のリーダーとなるシルフェが持っていた方が、よいのではないかとディセルは思ったのだが、シルフェには違う考えがあるようだ。

「僕はこの作戦を指揮するリーダーだ。でももしも僕が対応しきれず僕らがばらばらになったときは、スノーティアスが先陣を切ってみんなを連れ出してほしいんだ。万が一のことがあった時は、まっさきに逃げてほしい。しんがりを務める僕の代わりに、持っていて」

シルフェを置いて真っ先に逃げるなんてごめんだとは思ったが、ディセルはその役割を受け入れることにした。セレイアの無事のためなら、真っ先に逃げても構わないと思ったからだ。それに神であるシルフェやサラマスならば、いかようにも逃げようがあるだろうとも思った。

―生身の人間である、セレイアだけはなんとしても守らなければ。

二人のこの会話とやりとりはひそやかに行われ、セレイアもサラマスも知らない。

食事と仮眠をとり、英気を養って、いよいよ作戦の時が迫ってきた。

もう、確認し合うことはない。

四人は頷き合って、廃屋をあとにした。
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