麗雪神話~幻の水辺の告白~
ディセルは氷の剣で、セレイアは槍で、シルフェは風の盾をつくりあげて、容赦なく繰り出される攻撃に応戦する。

静かな月明かりの夜に、剣戟の音が鳴り響く。

床に、切り裂かれた赤い花が、血のように散らばっていく。

三人はおされていた。

「…ここは僕に任せて、二人はバルコニーから逃げて!!」

シルフェが叫んだ。

と同時に、風の刃が数人の敵兵を切り裂き、バルコニーへの道が開ける。

セレイアはそんなことできないと言おうとしたのだが、そう口にするより早く、ディセルがセレイアの腕をつかんで走り出していた。

「ディセル!? シルフェは―」

「シルフェなら大丈夫だ! 戦えるし、空も飛べる! セレイア、跳ぶよ!」

下は深い水をたたえた濠だ。その向こうには高い城壁がある。

ディセルは瞬時に氷の階段を創り、その上へセレイアを連れて跳んだ。

追いかけてこようとした敵兵だが、氷の階段はすぐに消えてしまったため、かなわない。

自然、衛兵たちの攻撃的な視線の矛先は、残されたシルフェに向いた。

バルコニーに近づけさせまいと、兵たちがバルコニーの前に集中する。

「くっ…数が多い。まだここからは外に出られないか、なら!」

シルフェは扉の前にいた兵士を数人風で吹き飛ばし道を開けると、勢いよく駆け出した。

「逃がすな! 追え!」
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