麗雪神話~幻の水辺の告白~
しばしの沈黙の後、ディセルが少しかすれた声をだした。

「セレイア、俺……」

何かとても大切なことを伝える時のような、真剣な声音と瞳。そう、その美しい銀の瞳に、射抜かれたようになって、セレイアは身じろぎ一つできなくなる。

「俺…………」

ディセルは何か言おうとして、そのまま辛そうに瞳を伏せ、口をつぐんだ。

セレイアは待った。

彼の話を聞きたいような、聞きたくないような自分がいる。

いや多分、聞きたくない。

でも目を逸らせず、じっと彼を見上げるセレイア。ディセルは明らかに言おうとしていたこととは別のことを唇に乗せた。

「セレイアは…俺たちが天上界に帰ったら、どうするの」

「どうって…」

「トリステアに、帰るの?」

それは聞かれるまでもない、当然のことだった。

ディセルの護衛が終わったなら、当然国に帰って、また今まで通り姫巫女として生きていくはずだ。

そのはずなのに、セレイアはディセルの質問を聞いて稲妻に打たれたような心地になっていた。

驚くほど、そのことを意識してこなかった。

ディセルと別れたあとのこと…そのあとの、自分の人生について。

この旅はずっと続くような気がしていたから…。
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