麗雪神話~幻の水辺の告白~
思わず、セレイアはうずくまるディセルをその胸に抱き寄せていた。

強く強く、ぎゅっと、抱きしめる。

この行為はそう、最初は、傷ついた彼を慰めるためだった。

しかし……

「セレイア…?」

胸元でくぐもった声が響くのを聞いた瞬間、セレイアの胸を衝く感情があった。

それは何よりも強く広く大きく、開いた視界に大海原を見たように、自分の中に開けた感情だった。

“愛しい”と、そう思った。

そして彼の手がセレイアの背中に回され、ぎゅっと力が込められた瞬間、“恋しい”とも思ったのだ。焦がれるような懐かしい感情を確かに感じたのだ。

それなのに、セレイアはその感情を認めなかった。

「大丈夫よ…大丈夫」

囁きながら、自分はただ、仲間として、悲しむ彼を慰めているのだと、セレイアは自分に言い聞かせた。

触れた体温が熱く感じるのも、胸の鼓動がはちきれそうに感じるのも、気のせいだと思った。

二人は夜が明けるまで、そうして固く抱き合っていたのだった。
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