麗雪神話~幻の水辺の告白~
「いかにも。私がこのエイフォーティク帝国の皇帝、レコンダムだ。
時に青年よ、腕の縛めはどうした?」

炎の力で焼き切りましたとは、素直に言いたくなかったので、サラマスはだんまりを決め込む。しかし、皇帝は機嫌を損ねたりはしなかった。

むしろ上機嫌な様子で言を継いだ。

「炎の力で焼き切ったのだろう?
まったくもって、素晴らしい力だ。
“あやつ”に匹敵する。
このまま処刑してしまうのはあまりにも惜しい」

サラマスは黙っていた。

黙って皇帝の目を見ていた。

食い殺されないようにするには、目線を外してはいけないような気がしたからだ。

「どうだ、青年、私に協力しないか?
私の傘下で武将として働いてくれるならば、お前の罪は咎めないことにしよう。むろん、お前の仲間も追わない。どうだ?」

「…………」

サラマスは即答しなかった。

とはいえそんなに長く返事は待ってもらえないだろうから、めまぐるしく頭を働かせる。

この牢で処刑の日を待ち逃げ出すのと、レコンダムのもとで働くのと、どちらがよいか…。
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