麗雪神話~幻の水辺の告白~
そうして空を見ているうちに思ったよりも時間が経っていたようだった。
月が真上に昇り、次の火の番を務めるディセルが、起き出してきた。
「お疲れ様、セレイア」
長い孤独の時間のせいだろうか、彼の低く優しい声の響きを聞くと、セレイアはきゅっと胸が締め付けられるような感覚を味わった。
これはいったいなんだろう。
「…うん」
「それじゃあ」
二人の会話は、たいへんぎこちない。
それは三月ほど前、空中庭園王国サティエイトで、彼と口づけをかわしてから、ずっとだった。
あれから、セレイアは彼と二人きりになることを無意識に避けて来た。
ディセルの方も、きっと同じだろうと思う。
セレイアは何かに呑み込まれそうな自分を、必死で腕を突っ張り耐えているような気分だった。
何に呑み込まれそうなのか、それすらわからない中で。
「………」
会話が続かない。
ディセルが、何か言いたそうに口を開いたが、すぐに諦めたようにその口を閉じた。
最近、二人きりでいると、ディセルは何かを言いたそうにする。
けれど結局彼はそれを胸の内に秘めてしまう。
信用されていないからだろうかと思うと胸が痛い。
結局セレイアはそのままディセルから視線を外し、毛布にくるまった。
この旅も、あと二か月ほどでようやく終わりを迎える。
そうしたら自分は…どうするのだろうか。
(今は…何も考えたくない)
どうしてか、喜ばしい気分になれない自分が、不思議で仕方がなかった。
月が真上に昇り、次の火の番を務めるディセルが、起き出してきた。
「お疲れ様、セレイア」
長い孤独の時間のせいだろうか、彼の低く優しい声の響きを聞くと、セレイアはきゅっと胸が締め付けられるような感覚を味わった。
これはいったいなんだろう。
「…うん」
「それじゃあ」
二人の会話は、たいへんぎこちない。
それは三月ほど前、空中庭園王国サティエイトで、彼と口づけをかわしてから、ずっとだった。
あれから、セレイアは彼と二人きりになることを無意識に避けて来た。
ディセルの方も、きっと同じだろうと思う。
セレイアは何かに呑み込まれそうな自分を、必死で腕を突っ張り耐えているような気分だった。
何に呑み込まれそうなのか、それすらわからない中で。
「………」
会話が続かない。
ディセルが、何か言いたそうに口を開いたが、すぐに諦めたようにその口を閉じた。
最近、二人きりでいると、ディセルは何かを言いたそうにする。
けれど結局彼はそれを胸の内に秘めてしまう。
信用されていないからだろうかと思うと胸が痛い。
結局セレイアはそのままディセルから視線を外し、毛布にくるまった。
この旅も、あと二か月ほどでようやく終わりを迎える。
そうしたら自分は…どうするのだろうか。
(今は…何も考えたくない)
どうしてか、喜ばしい気分になれない自分が、不思議で仕方がなかった。