麗雪神話~幻の水辺の告白~
シルフェには一国の王になりたい気持ちなどわからない。

ボリスは視線を手元に注いだまま、答えた。

「お前も俺の演説を聞いただろう?
今のこの国の在り方は腐っている。
俺は俺の力で、新しい、民が幸福になれる国づくりをしていきたいんだ」

「そのために、今日みたいな危ない目に遭っても?」

「ああ、そうだ」

ボリスは迷いなく、頷いた。

シルフェにはますますわからなかった。

自分の恋には夢中になれても、たとえば守るべき人間たちの幸福を、そんなに真剣に考えたことなどなかった気がする。

「それに―…」

ボリスは何か言いかけて、口をつぐんだ。

「それに、何?」

ボリスはきゅっと包帯を結びながら、ちょっとその眉を寄せる。
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