麗雪神話~幻の水辺の告白~
「レコンダムは最低の男だ。
個人的に俺は、奴に復讐したいんだ」

「復讐?」

シルフェが問い返したその単語は、シルフェの澄んだ声が発するのにふさわしくない、物騒な気配を持っていた。

それを感じたのだろう、ボリスは少し頭を振ってシルフェに小さく笑いかけた。

「いや、なんでもない。
こんな話、お前にしてどうするって言うんだ俺は」

「聞かせてよ。
もっと聞きたい」

「…シルフェ」

シルフェの反応が、ボリスには驚きだったようだ。そのわずかに見開かれた瞳を見ればわかる。シルフェは視線を逸らさなかった。

ボリスの話を聞くことが、自分にとってとても大切なことのように感じたから。

しばしの沈黙ののち、ボリスは詰めていた息をふっと吐いた。

「そうだな…俺には師がいた」

ボリスはぽつりぽつりと、語りはじめた。

彼が抱える過去を。
< 77 / 174 >

この作品をシェア

pagetop