麗雪神話~幻の水辺の告白~
ボリスは、比較的裕福な商家の一人息子として、この国に生まれた。
彼が覚えている両親はいつも優しく、慈愛に満ちて、ボリスを心から愛してくれていたという。母は体が弱く、ボリスを産んでから子供を産めぬ体になったため、「たったひとりの我が子」と、彼らは全身全霊で彼を愛してくれたのだ。
まだ字も書けぬうちから商売のいろはを父から学び、母はそれを優しく見守る。
幸せな日々だった。
けれどその幸せは、一夜で崩れ去った。
「―戦争だ」
と、ボリスは語った。
その時の目は、奥の方でちりちりと炎が燃えているような、強い感情の渦巻く目だった。
ボリスが6歳の時に一家は戦渦に巻き込まれ、両親は帰らぬ人となった。
ボリスは自分の身に何が起きているのかも理解できぬまま、孤児院で生活することとなった。
父と母を恋しがり、ボリスは泣き暮らした。
そんな日々を送っているときに現れたのが、のちの師、グレフだった。
長い黒髪に、琥珀色の瞳を持ち、屈強な体つきをした男。
けれどその瞳は穏やかで優しく、昔図鑑で見た、海に暮らすジュゴンのような雰囲気を彼からは感じた。
彼が覚えている両親はいつも優しく、慈愛に満ちて、ボリスを心から愛してくれていたという。母は体が弱く、ボリスを産んでから子供を産めぬ体になったため、「たったひとりの我が子」と、彼らは全身全霊で彼を愛してくれたのだ。
まだ字も書けぬうちから商売のいろはを父から学び、母はそれを優しく見守る。
幸せな日々だった。
けれどその幸せは、一夜で崩れ去った。
「―戦争だ」
と、ボリスは語った。
その時の目は、奥の方でちりちりと炎が燃えているような、強い感情の渦巻く目だった。
ボリスが6歳の時に一家は戦渦に巻き込まれ、両親は帰らぬ人となった。
ボリスは自分の身に何が起きているのかも理解できぬまま、孤児院で生活することとなった。
父と母を恋しがり、ボリスは泣き暮らした。
そんな日々を送っているときに現れたのが、のちの師、グレフだった。
長い黒髪に、琥珀色の瞳を持ち、屈強な体つきをした男。
けれどその瞳は穏やかで優しく、昔図鑑で見た、海に暮らすジュゴンのような雰囲気を彼からは感じた。