麗雪神話~幻の水辺の告白~
その声色の優しさと、間近の瞳が宿す真摯な色に、ボリスは声も出なかった。

思わず抵抗をやめたボリスを、彼は、その腕に強く抱きしめた。

『…そうだ。私たち政治家の責任だ。
だから私は、新しい世をつくりたいと思う。
お前に、見せてやりたいと思う。
私の名はグレフ。
…私と一緒においで』

『………っ!!』

その言葉に、射すくめられたように思った。

怖かった。

色々なことが激動していくことが。

もう何も壊したくないのに、壊れていく。そんな気がして。

けれど、グレフの瞳に、惹かれるものがあったのも事実だった。壊されるだけじゃなくて…彼となら何かそこに大切なものを築いていけるような、そんな直感があったのだ。

結局、ボリスはグレフの養子となることを承諾した。
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