麗雪神話~幻の水辺の告白~
共に過ごすうち、本当の親子のような情が、二人の間には芽生えた。

そしていつだったか、グレフもまた戦争で両親を亡くし孤児院にいたのだと知った。

その時思った。

自分がもしずっと孤児院にいたら、ただ国や政治家を呪うだけで、何もしようとしなかったのではないかと。グレフのように、政治家となり、国を変えようと、行動を起こせていただろうかと。

…グレフのようになりたい。

その背中を、いつか越せるような、大きな人間になりたい。

そう自覚した時、ボリスの中の何かが廻りだしたのだ。

グレフは政治家として優秀な存在で、国王の信任も厚かった。

国王は自らの養子レコンダムと、グレフの、どちらに帝位を譲るか、長年悩んでいたという。

グレフは特別王位を望んではいなかったが、誰よりも国を変えていきたい思いは強かったろう。

―それがたとえレコンダムの政治の下でも、なんでも構わない。世界が変わり、人々に幸せが満ちるならそれでいい。

グレフの言葉に、ますます彼を敬愛する気持ちが強くなったのを覚えている。

―しかし。

レコンダムの方は、そうは思っていなかったのだ。

そしてあの日が訪れる…。
< 82 / 174 >

この作品をシェア

pagetop