麗雪神話~幻の水辺の告白~
ボリスは逃げ出し、グレフに駆け寄る。

『師匠! 逃げよう!』

…しかし。

『…私はだめだ、ボリス。足の健を斬られている。それに内臓もやられているだろう…もう、助からない』

『そんな!! 師匠!!』

こみ上げる涙で視界がぼやけ、グレフの顔がよく見えなかった。

最後の…大切な瞬間だったのに。

グレフは最後の力を振り絞って、ボリスをプミールに乗せた。

そして、もう一度こう言ったのだ。

『私の夢を叶えてくれ、ボリス。絶対に手を離すな。
――――――行けっ!』

グレフに尻を叩かれ、プミールが弾かれたように走り出す。

振り返っても、涙で何も見えない。

だから声の限りに叫んだ。

『師匠! 師匠!
師匠――――――――っ!!』
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