麗雪神話~幻の水辺の告白~
(人間界にいる間に、人間のために一働きするってわけだね)

「…わかった。でも、女神役がほしいなら、僕、女の姿になるね」

「そうだ。女装するんだ」

「いや、僕、女になるね、って言ってるの。そうしたらこのドレスもとびきり似合うと思うよ」

「…………は?」

乙女が着替えるんだからと、シルフェは部屋からさっさとボリスを追い出した。

そして久々に、女の姿へと変化する。

緩やかな曲線を描く乳房に、くびれた腰。喉元や首筋にも、男の姿の時にはないつややかさが加わる。

女性の姿で女性の衣を身に着けるのは、嫌いではなかった。

だがどうしても、シルフェはこの姿に劣等感を持っていた。

サラマスの想い人ディーネリアと、比較してしまうから……。

ディーネリア程美しい女性の神は見たことがない。だからシルフェは、比較されたくなくて少年の姿を好むようになったのだ。
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