麗雪神話~幻の水辺の告白~
神の化身としてシルフェが登場する演説は、大成功をおさめた。

シルフェは人々の前で、あえて何も口にしない。

ただその尋常でなく美しい姿をさらして微笑んでいるだけだ。

それが神秘性を増し、人々は思わずひれ伏した。

「風の神シルフェード様の加護を受ける、ボリス様!」

「ボリス様万歳!」

わあっと広場に広がる歓呼の声。それに、ボリスは堂々と応える。

今日は辺境ではなく、王都にほど近い大きな街の広場が舞台だ。

ここでもボリスの人気はすさまじいものがあった。

これで現皇帝レコンダムが倒れたら、人々は間違いなく彼を次の皇帝にと望むだろう。

しかしこのような大きな街で演説をすると、当然のように役人が現れ追ってくる。

今日も例外ではなかった。

鎧を身にまとった男たちが、人並みをかきわけて、二人に向かってこようとする。

「逃げるぞシルフェ!」

いつものように、ボリスがシルフェの手を引いて駆けだす。

その手のつかみ方が、なんだかいつもより優しいような気がするのは気のせいだろうか。
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