麗雪神話~幻の水辺の告白~
セレイアが目に涙をためてうつむいていると、ディセルがそっと優しく彼女の肩に手を置いた。

「…そんな顔しないで。
二人ならきっと大丈夫だから。今は、地道に情報を集めるしかないよ。アクセサリーに夜の虹の力を集めるためにも、今は俺たちでできることを、―レインスを捜しておいた方がいい」

正論だった。

けれどセレイアの胸に巣食う恐怖が、セレイアに安寧を与えてくれない。

焦りばかりが募る。

…ふと思った。

(――――――ヴァルクスなら)

ヴァルクスなら、どうするだろう。

そう思っただけで懐かしい面影が鮮やかによみがえり、セレイアは泣きたくなった。

故国を遠く離れ、言葉も文化も違う国で、彼を思い出させるものなど皆無だというのに。

それでも、懐かしい。

昼食後、二人はまた街での情報収集を再開した。

情報収集と言っても、聞き込みを行うわけではない。そんなことをしていたら、すぐに正体がばれてしまうからだ。

ただ、人のうわさの飛びかうところに行って、ひたすら耳を澄ませる。時には話に参加することもある。しかし今のところこの方法では、大した噂を耳にすることはできなかった。

やはり危険を覚悟で聞き込みをするしかないか…。
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