麗雪神話~幻の水辺の告白~
近づくと、華やかな香りが鼻腔をくすぐる。
「御嬢さん、花はいかが? どれも綺麗だろう」
「…ええ」
思わず唇に微笑を乗せて、セレイアは花々に見入った。
中にはトリステアで見た懐かしい花もある。けれどほとんどが見たことのない、この地方産のものだった。
ゆっくりと、ひとつひとつの花を見て楽しんでいたセレイアは、ふとひとつの花に目を留めた。
「この花………」
大振りの赤い花に、思わず手で触れる。
堅い感触は、生花のものではない。
やはり、造花だ。
「この国では本当にこの花の造花が多いんですね。でも、どうして生花ではなくて、皆造花なのですか?」
「ああ、あんた旅人だから、知らないんだね」
店主は笑顔で説明してくれた。
「この花は“アプロマイト”。幻の花とも呼ばれる、たいへん希少な花で、本物はジャングルの奥の水場のあたりに生えていると言われているよ。でもま、見つけられた人はほとんどいないって話だ。そういった希少さからか、この国では縁起物として皆に愛されている。国花にもされているよ」
セレイアはなるほどと頷いた。
だから宿だけでなく、皇帝の寝室にまで飾られていたのか。
(造花なら、買って行ってもいいかしら)
セレイアがディセルと相談しようと振り返りかけた時、店主が言った。
「アプロマイトの本物を見つけたら、死者に会うことができるそうだよ」
(え……―――?)
その一言は計り知れない衝撃を持って、セレイアの胸にずんと沈んだ。
「御嬢さん、花はいかが? どれも綺麗だろう」
「…ええ」
思わず唇に微笑を乗せて、セレイアは花々に見入った。
中にはトリステアで見た懐かしい花もある。けれどほとんどが見たことのない、この地方産のものだった。
ゆっくりと、ひとつひとつの花を見て楽しんでいたセレイアは、ふとひとつの花に目を留めた。
「この花………」
大振りの赤い花に、思わず手で触れる。
堅い感触は、生花のものではない。
やはり、造花だ。
「この国では本当にこの花の造花が多いんですね。でも、どうして生花ではなくて、皆造花なのですか?」
「ああ、あんた旅人だから、知らないんだね」
店主は笑顔で説明してくれた。
「この花は“アプロマイト”。幻の花とも呼ばれる、たいへん希少な花で、本物はジャングルの奥の水場のあたりに生えていると言われているよ。でもま、見つけられた人はほとんどいないって話だ。そういった希少さからか、この国では縁起物として皆に愛されている。国花にもされているよ」
セレイアはなるほどと頷いた。
だから宿だけでなく、皇帝の寝室にまで飾られていたのか。
(造花なら、買って行ってもいいかしら)
セレイアがディセルと相談しようと振り返りかけた時、店主が言った。
「アプロマイトの本物を見つけたら、死者に会うことができるそうだよ」
(え……―――?)
その一言は計り知れない衝撃を持って、セレイアの胸にずんと沈んだ。