本当のわたし
「あの時、美月が俺の背中を押してくれたおかげだよ」

「え?あの時って?」

「俺が俳優にならないかってスカウトされた時だよ。やりたい事も好きな事もなかった俺にとって痛いくらいに突き刺さってきたんだぞ!」

「いやだってウジウジしてる優也がムカついたんだもん」

「「悔しくないの?みなちゃんには先生になりたいっていう夢があって、私には絵があるのにアンタにはなんにもない!それが悔しいと思わないの?せっかく何かを見つけるチャンスがそこにあるのになんで飛び込んでみないの!?」なんて小学生の言う言葉かよ。美月らしいけどさ〜!」

「あの時はさ、壮太郎さんに泣き付かれてあたしだって必死だったんだよ?」

「だけど美月のその言葉があったから好きな事も夢も見つけられた。ありがとうな。」

「やめてよ〜!なんか気持ち悪い〜!」

「おい!でもだからこそ!好きなものがあるのなら失ってほしくないんだ。それが見つからなくて俺みたいに苦しんでる人がいる。だからそれがある人はそれを大切にしなきゃいけないんだって思う。」

「そうだね。あたし、またいつか絵を描ける日がくるかな?」

「大丈夫だよ、今の美月なら。美月は自分が思っているよりもずっと強くなったし前に進めてる。少しは自分のこと認めやれよ。」

「優也に励まされる日が来るとはなぁ〜!」

「おい〜!またそうやって〜!」

ありがとう、優也。
少しシワができてる封筒をみて心の中で呟く。あたしにこれを渡す為にたくさん勇気を振り絞ってくれたんだろうなぁ〜。
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