本当のわたし
「三木は今でも苦しんでいるんですね。」

「うん。でも今は夏川くん達が側にいてくれるからちょっとずつ昔の花蓮に戻ってきているような気がする。さてと!私はちょっと職員室に行ってくるね!花蓮のことをお願いしても良い?」

「はい。」

「よろしくね!」

そう言って矢作先生は保健室を飛び出して行った。

「保健室の扉は静かに!じゃなかったのかよ。」

眠っている三木の隣に座る。
三木が本当の名前じゃないとわかった時、ほっとした。そしてやっとこの気持ちが恋なんだと認めても良いじゃないかと思えた。

俺はどうして三木に笑っていてほしいと思うのか。幸せになってほしいと思うのか。

それは三木が「三木美月」という名前だからだと思っていたんだ。

俺は「三木優希」である自分を認める事ができない。「三木優希」で幸せになろうと思えない。俺はやっぱり「夏川優希」でいたい。

だから変わりに、せめても同じ「三木」である三木に変わりに幸せになってほしいと思うんじゃないかと心のどこかで思っていたから。

でも違った。
三木の本当の名前を知った今でも三木の顔を見て笑っていてほしいと思う。

三木がこの先ずっと幸せでいてほしいと思うと事ができてる。

これは紛れもない恋なんだ。

自分が思っているほど複雑な気持ちなんかじゃなかった。
その事実に凄く安心する。
それと同時に今目の前で眠っている三木が心配でたまらなくなる。

俺に出来ることあるかな。
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