本当のわたし
「俺は三木を名乗るのが嫌なんだ。そうしてしまったら夏川さんが俺から消えてなくなるような気がして。俺にとって、夏川さんだけが俺の親なんだ。」

俊にすら言えなかった俺の想い。
血の繋がりがない俺と陸斗の唯一の「名字」という繋がりがなくなってしまったら俺から陸斗が消えてしまうような気がするんだ。それに俺が三木になったら陸斗はまた1人になってしまう。陸斗からやっとできた家族を奪ってしまうようで怖い。

「あたしは、三木でも夏川でもどちらもなっちゃんであることに変わりないからどちらも好きだよ。側から見たら簡単なことでも本人にとっては大きなことってやっぱりあるんだよね。あたしはなっちゃんがしたいようにしたら良いと思うよ」

三木にとって本当の名前がそうであるように、俺にとって名字はそういう存在なんだと思う。

俺も、三木が「三木美月」でも「中西花蓮」でもどちらであっても三木であることに変わりがないから好きだって思える。
三木の抱えている事を聞いたからこそ余計にそう思う。

だからもう…

「あはは。なあ美月。」

「三木」と呼ぶ必要はない。

だって、三木に俺の代わりに幸せになってほしいなんて思わないから。

俺は「三木美月」という1人の人間が好きになったんだ。

その笑顔を守り続けたい。
美月の幸せを俺は願うよ。

美月が幸せそうに笑う横に俺も入れたらいいのにな。
< 118 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop