本当のわたし
改札を通ってすぐのベンチに見覚えのある女の子が困り果てた顔で座っていた。

確か真山結衣さんだっけ?

結構深刻そうな様子だったし、わりと遅い時間になっていたので声をかけることにした。

「真山結衣さん…?」

「え!?どうして私の名前?」

「あ、この前G町でナンパされた時に助けてくれた女の子いたでしょ?あれ俺の友達で俺、近くにいたんだけど覚えてない?」

「あ!小田切さんの友達だったんだ。あの時はありがとうございました。補習の帰りでバイトに遅刻しそうで焦ってからちゃんとお礼ができなくて…」

そう言って頭を下げた。
そういえば制服着てたな。

「いやいや俺は何にもしてないよ。助けたのは舞美だし。それよりどうしたの?何かあった?」

「今日色々あってヒールで猛ダッシュしたらヒールが折れちゃって…。別に裸足で帰っても良かったんですけど、流石に人目が気になるからある程度人が捌けるのを待ってたんです。」

情報量が多すぎてついていけない。
女の子ってヒールで猛ダッシュする事ってあるもんなの?親を呼ぶとかそう言う選択肢は彼女の中でなかったのだろうか。

「とりあえずさもう暗くて危ないから帰ろうよ。家どの辺?送って行くよ。」

「えっとメイプルっていうご飯屋さんなんですけど」

「え?真山さんあそこに住んでるの?」

「住んでるというあそこは父はお店なので…」

そういうことか!
だからメイプルで働いてたのか。
話を聞くと裏と繋がっており、そこは側から見たら一軒家になっているらしい。

「それじゃ帰れないでしょ?」

「あの本当に申し訳ないんですけど、これでどこかで靴買ってきてくれませんか!?」

俺がおんぶしようとすると3千円を渡された。女物の靴を買うのは恥ずかしかったが仕方ない。
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