本当のわたし
「お待たせー!」

犬が帰ってきた。
それはそれはもう嬉しそうに。
メイクさんって凄いな。
パッと見じゃ誰かわからないよ。

「はやく行こう。」

半歩後を歩く。
七瀬春樹はスキップしそうな勢いでルンルン
本当にこのギャップなんとかならないの?

「わーい!食べるぞー!」

「そんなに食べるの?」

「おうよ!」

大皿3ついっぱいに持ってきたスイーツ達。
なんて凄い胃袋。
胃もたれとかしないのかな。

「お母さんも甘党なの?」

なっちゃんも甘党だから遺伝なのかな。

「うーん。お袋はそうでもないかな。」

「なっちゃんも甘党だから遺伝なのかと思った。」

「あー。叔母さんは甘党だよ。」

「やっぱり遺伝なのか。劣性遺伝ってやつだね。」

「え?」

あ、そうだった。
こいつバカなんだった。

「なんでもない。なんで今の仕事しようと思ったの?」

わりとずっと疑問だったこと。
芸能界とか興味なさそうなのに。

「ん〜最初はスカウトされたんだよ。中2のときに。当時欲しいゲームがあってさそれを買うためにバイト感覚で始めたんだよね」

「なにそれ笑」

モグモグと幸せそうに食べながら話す。
あまりに不純すぎる理由に笑ってしまった。

「だけどこの仕事をしていくうちにさ、それまで何もやりたい事がなくて、ただゲームしてなんとなく過ぎていく毎日を変えたいと思ったんだよ。初めて何かに真剣になってこれで生きていきたいって本気で思えたんだよ。」

そう話しながらブラックコーヒーを飲む七瀬春樹はモデルの顔をしていて別人みたいだった。
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