本当のわたし
本当の“女”になった母親は、他にもっといい男を
見つけた。
つまり、浮気ってわけ。
でも、陸斗は優しいから見て見ぬ振りをしてた。
自分が悪いと言ってた。
僕がこんなんだから悪いんだと。

「僕がもっとちゃんとしてたら、優希にもこんな想いさせなかったのにね。ごめんね。」
そうやって、泣きそうな顔をして言ってたあいつを今でも鮮明に思い出せる。


でもある日突然だった。
俺が中2になる少し前、突然帰って来なくなった。
理由は簡単だ。男のところに行った。

そして、結局離婚した。
泣きながら、離婚届に判子を押して最後に
「今度は、幸せになってね。今までこんな僕を支えてくれてありがとう。」
そう言ってた陸斗が心の奥底からすごいと思った。同時にバカかよ。とも思った。
なんでだよって。こいつはお前を捨てたんだぞ?なんでそんな事が言えんだよ。って。

父さんも母さんも他にいい人を見つけていなくなった。俺のところから。
俺は望まれて生まれてきたわけじゃない。

陸斗はまだまだ若い。
俺なんか引き取ってくれるわけない。

どうなるんだろうってたくさん考えた。

陸斗は言ったんだ。
2人で住もうって俺が優希を守るからって。

弱々しい声で泣いた顔で。

その時思った。こいつは俺を捨てなかった。
そばにいて支えなきゃって思ったんだ。

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