Pallet
鮎川……。

ギュッと握りしめたこぶし。

今すぐ、
今すぐにでも迎えに行ってやりたい。

でも、一人の生徒だけを特別扱いすることはできない。

空が青白く光った。
間髪入れずに響く轟音。
それに突き動かされるように、教室を飛び出した。

ポケットに手を入れる。
指先に当たる鍵の感触。

階段を駆け下り、職員室を通り過ぎた。
職員用出入り口から駐車場まではそんなに距離はない。

しかし、車に乗り込む時には、全身雨に打たれてずぶ濡れになっていた。

半ばヤケになっていたのかもしれない。
一人の生徒にそこまでするなんて、普通考えられないから。

この気持ちを悟られるかもしれない。

でも、それでも良いと思った。

キーを差し込み、エンジンを掛ける。

最速でワイパーを動かしても視界の悪い中、焦る気持ちがアクセルを踏み込んだ。


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