Pallet
「もう、これくらい自分でやってくださいよ」

そう文句を言いながらも、もくもくとプリントの端をホッチキスで留めていく鮎川。
その後ろ姿が、せわしく映る。

「悪いな。ちょうど鮎川が暇そうにしていたから」

イケないことだとは分かっていても、思わず抱きしめたくなってしまうその背中。
気を紛らわせるために、ついてしまう悪態。

「ヒドッ! 何それ、私にだって予定があるんです」

振り返った彼女の勝気な瞳、魅力的な唇、そして華奢な身体つき。
そのすべてを包み込みたい衝動に駆られて、差し出した手を寸でのところで留める。

「へぇ、それは悪かったね。で、何の予定?」

駄目だ!
ダメだ、ダメだ、ダメだ!!

俺にはこの感情を表に出すことも、この娘に感づかれることもあってはいけないことなんだ。

なぜなら……。

「それは……」

「ホラ、どうせ家でゴロゴロするだけだろ?」

なぜなら俺は

「うぅ、そうだけど。先生には関係ないじゃん」

君の先生だから。

そして君は、俺の教え子だから……。

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