お隣さんと内緒の恋話
目の前で深く紳士的な挨拶をするアーティストが ユニコーンを私たち客の前に突きだし 何かをしている。
客の視線を釘付けにした結果、小さな女の子を抱っこした お爺さんの所でアーティストがユニコーンを止めた。
あ… あの子もらえるんだ!
いいなぁ~
嬉しそうだな、あの子。
ちょっとしたサプライズだったのか、去る客もいれば なんとなく まだ見ている私たちがいたりする。
笑顔を崩さないアーティストが私と葵を見た気がした。
私は ふいに葵の手を繋いだ。
「 椿、行く?」
「 うん 」
顔を見合っていると、わぁ!っと声が響いた。
目の前にいるアーティストを見ると また何か作っている。
キュキュキュッと風船が締まる音に 形付いていく。
「 なに 作ってんのかな?」
「 なんだろな、なんかデカいけど… 花?」
ひまわりとか? 違うか…
そう思っていると、アーティストの手にある花がパパンと勢いよく割れていくのを見入る。
「 すげ…」
「 気持ちいよね、あれだけ割れると 」
そして割れた花を隠すように 一回転したバルーンアーティストが私の足元に膝まづいた。
「 え… えっ?」
ポンッと私の前に一輪のバルーンの薔薇。
「 私が野獣とするならば… あなたは希望の薔薇です、どうぞ 」
「 わ、私っ!? え~ 」
まさか、もらえるなんて…
ヤバ… 嬉しすぎる!
「 良かったな、椿。…希望の薔薇ねぇ 」
「 あ、なによ~ 映画で例えただけでしょ~」
女の子はねぇ なんだかんだ言っても乙女ちっくなんだって。
「 それなら、俺が野獣でもいんだな?」
「 うん、いいよ~…… えっ!?」
葵、それ… 大胆発言だよ?
わかってる?