お隣さんと内緒の恋話
逃げなきゃと本能が私に言う。
いつかテレビで見たことのある足蹴りをしてみようと思った。
でも、どうやって? 雅は私の後ろにいる。
思い描くも 当たる気がしない。
「 …雅くん、離れてください 」
「 いや、無理だな 」
なんでよっ!
「 葵が帰ってきちゃう 」
こんなの見られたくないよ… 雅くん服着てないし!
「 椿ちゃん置いてく葵が悪い。俺なら…」
「 …っ!」
「 君を一人になんかしない 」
ぐるんと雅に向い合わせにされた私は 雅の口から出た言葉と一緒に見つめた。
私を一人にしない?
雅の真剣さに思考が止まりそうだった。
でも、ふと雅が女の人と一緒にいたのを思い出してしまった。
雅くんはおかしい。
「 雅くん、変だよ?」
聖奈さんの名前聞いてから変だよ…
なんかある、間違いない。
「 俺が変? 椿ちゃんよりは賢いけど…」
そんなの わかってるし!
「 雅くん 聖奈さんと…」
「 しっ… 」
顔を覗くように 近づく雅と鼻先が触れそうで、逃げなきゃなんて思う瞬間を逃してしまう。
そのタイミングは時として良くも悪くもある。
「 ……椿、雅、なにを…」
ウソ、葵っ!?