お隣さんと内緒の恋話

逃げなきゃと本能が私に言う。

いつかテレビで見たことのある足蹴りをしてみようと思った。

でも、どうやって? 雅は私の後ろにいる。

思い描くも 当たる気がしない。


「 …雅くん、離れてください 」

「 いや、無理だな 」


なんでよっ!

「 葵が帰ってきちゃう 」


こんなの見られたくないよ… 雅くん服着てないし!


「 椿ちゃん置いてく葵が悪い。俺なら…」

「 …っ!」

「 君を一人になんかしない 」


ぐるんと雅に向い合わせにされた私は 雅の口から出た言葉と一緒に見つめた。


私を一人にしない?

雅の真剣さに思考が止まりそうだった。

でも、ふと雅が女の人と一緒にいたのを思い出してしまった。

雅くんはおかしい。


「 雅くん、変だよ?」

聖奈さんの名前聞いてから変だよ…

なんかある、間違いない。


「 俺が変? 椿ちゃんよりは賢いけど…」


そんなの わかってるし!


「 雅くん 聖奈さんと…」

「 しっ… 」


顔を覗くように 近づく雅と鼻先が触れそうで、逃げなきゃなんて思う瞬間を逃してしまう。

そのタイミングは時として良くも悪くもある。


「 ……椿、雅、なにを…」


ウソ、葵っ!?




< 93 / 419 >

この作品をシェア

pagetop