お隣さんと内緒の恋話

沈黙を破り 雅が明るい声で口開き、食事をどうするかと聞いたが、葵が私が作ると言ったために覚悟を決めるしかなかった。


そりゃあさ、初めは葵に作ってあげたいと思ったよ?

でもね、自慢じゃないけど料理なんか… したことないからっ!

だいたい葵は聖奈さんに酢豚作ってっておねだりしてたくせに…


「 椿、酢豚の材料 冷蔵庫前に置いたから。一緒についてようか? あ、俺 手伝うか?」


なぬっ

酢豚ですと!?


「 あは… 葵 酢豚好きなんだね~」

「 あれ うまいもんな。椿が作る酢豚、楽しみだよ 」


な、なんて 嬉しそうにっ…

この私が作るっていうのに、不安の欠片も疑いの眼差しすらないじゃーん!

泣きたいよぉ…


葵は私の肩を少し揉んで笑顔満載。


「 俺 何をすればいい?」

「 えっとねぇ…」


うえぇん、わかんないから~


「 ……ぶふ 」

んん!? なぜ笑う!


いきなり笑う雅は 私と葵がキッチンでやり取りしている間 私たちを見ていた。


「 椿ちゃん、今日は俺が作ってあげるよ。葵は手伝え 」


雅の言葉に私の内心は パァッと晴れた。


あ~ 雅くんが神様に見えそう!

「 いいの?雅くん作れるの?」

「 俺を誰だと?葵に食べさせてきたんだ、料理くらいできるよ。でも、今日は椿ちゃんのために作るから 」


優しい笑みで ウィンクまでする雅に 一瞬の寒気と葵への優しさを見た。


「 椿、雅はこう見えて料理できるから安心していいからな 」

「 うん!ごちそうになりまーす 」


良かった、作らずに済んだし!

やっぱ食べるが良しよね。


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