アサガオを君へ
私はわたあめから口を離した。


ベタッと唇にへばりついたわたあめを、私は舐めた。


そして首をかしげる。


「…変わらなくちゃいけないの?」


「っ!」


栄治は顔をグニャッと歪める。


…夏樹が腹を立てるとこうなるのかな?


夏樹は腹を立ててもこんなに表情にでない。


だから夏樹と同じ顔で表情を歪める栄治に、どうしても夏樹がかぶる。


呑気にそんなことを考えていると、栄治はわたあめを地面に叩きつけた。


そして顔を歪めたまま私を真っ直ぐ見る。


「そういうところが嫌いなんだよ。昔から俺が正しいことを言ってるのに、兄貴と心には全く通じない」


私を見つめたままの状態で、グシャッとわたあめを片足で踏みつけた。


あ…。


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