アサガオを君へ
「夏樹のわたあめ…」


せっかく買ったのに。


綺麗にふわふわだったわたあめは、ペシャンコに砂で汚れてかわいそうになっている。


栄治は私の手首を掴んだ。


ギリギリと骨が軋むほど、掴まれた手首が痛い。


「はなして…わたあめ買い直す」


「だから、そういうのやめろよ。兄貴の彼女でもないのに」


ビクッと肩が動いた。


なんなの。


何でそういうこというの。


彼女じゃないとしちゃいけないの?


「私は…」


栄治をキッと睨みつけた。


「私は、夏樹の親友よ。誰よりも大切な親友。彼女じゃないとわたあめ買ったらいけないの?」


栄治はグッと歯を噛み締めてから口を開いた。


その時。


栄治の肩に見慣れた手が置かれた。


「栄治。心の手放せ」
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