アサガオを君へ
「夏樹!」


私が顔を輝かせ夏樹の名前を呼ぶと、栄治はパッと手を離した。


そして不慣れな下駄でパタパタと夏樹に駆け寄った。


「ごめん。わたあめ落とした!」


「いいよ。陽平が大量にたこ焼き買ってきたから」


ヨウチン…やっぱり買ってきたんだ。


おかしくて笑うと、夏樹もフッと笑った。


夏樹もたこ焼きが大好きだったけど、さすがに大量に買ってきたことはなかったなぁ。


私はそんなことを思い出しながら、わたあめに口をつけた。


それなのに、せっかくつけた口がわたあめから引き離されるくらい、グイッと肩を引っ張られた。


「2人して、俺を無視するな!…なんなんだよ。良い加減にしろよ、心も兄貴も…」


昔の栄治は、こうなるとよく泣いていた。


でも、今は栄治もはるかに大人になった。


ただ顔を歪ませているだけだ。
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