アサガオを君へ
私も夏樹も無言で栄治を見つめる。


あの時もそうだった。


私たちが中1で栄治が小6のときの夏祭り。


栄治は私たちの後をついて回るのが好きだった。


私たちもそんな栄治が嫌じゃなかった。


でもあの時の夏樹は、栄治にとても劣等感を抱いていて、一言も口をきかなかった。


雰囲気が悪いなか、出店を見て回っていたときに見つけたくじを3人でやろうよっと私が誘った。


夏樹と栄治は3等のエア玩具が当たって、私は6等のヘアピンが当たった。


一番しょぼい景品だ。


ヘアピンにはピンクと青色の二色があって悩んでいると、栄治はパッとピンクのヘアピンを持って言った。


「心!ピンク!ピンクがいいよ!」


「そう?」


私は栄治からピンクのヘアピンを受け取った。


そして、くじ屋のおいさんにこれにしますっと言いかけたとき、夏樹が私をまっすぐ見つめて言った。


「青。青がいい」


嬉しかった。


初めてそんなことを言われて、私はすごく嬉しかった。


私はソッとピンクのヘアピンを戻して、青のヘアピンを持つとおいさんに今度こそ、これにしますっと告げた。
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