アサガオを君へ
青のヘアピンを持ってニコニコしていると、栄治が言った。


「何で?絶対に青よりピンクが似合ってるのに…。昔から心は何で兄貴の言うことばっかりなの?俺の方が正しいのに…」


今にも泣き出しそうな、悔しそうな顔をした栄治。


私は横にいる夏樹を見上げる。


夏樹はプイッとそっぽを向いて栄治を見ようともしない。


私は栄治に視線を戻して言った。


「だって、夏樹が言うから。夏樹が言うなら、私はピンクより青がいい」


私なりに正直な気持ちを言った。


だけどそれが間違ったらしい。


栄治は、とうとう泣いてしまった。


そして声をかける暇もなく、もういいっと言って走って帰ってしまった。


私たちはあのときも、こうやって2人で栄治を無言で見つめていた。
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