アサガオを君へ
私は少し小走りで玄関に向かうと、上履きから外履きへと履き替える。


そして校舎の一番端にある、古い小屋の前で立ち止まった。


誰もいないよね?


私はキョロキョロと辺りを見回してから、ギィッと音を立てる重たいドアを開ける。


ムアっとこもっと空気が一気に外に出ようと押し寄せ、少しあつい。


私は中に入って小さな植木鉢とゾウさんジョウロと、たくさん置いてある種の中から一つ選んで外に出る。


すると、ちょうど学校からチャイムの音がした。


私はその音を聞きながら植木鉢に土を入れていく。


今日はホームルームと学活だけだで帰れるから、そろそろ人が押し寄せてくるな。



まぁ、ここは校舎の端で玄関からも遠いから関係ないか。


グイッと腕で額の汗を拭ったとき、ドサッと目の前に見慣れたリュックが置かれた。


びっくりしてそのリュックを見つめると、私のリュックだった。


そしてそのリュックの向こう側に見える靴を見て、ボソッとつぶやいた。


「夏樹…」


顔を上げると案の定、夏樹が無表情でこちらを見つめていた。


「よく分かったな」


そう言って夏樹はその場にしゃがみ込んだ。


私は少し間を置いて、靴を指差して言った。


「靴。私があげたんだから覚えてるよ」
< 12 / 224 >

この作品をシェア

pagetop