アサガオを君へ
ノンちゃんはそれを聞くと、私にクッキーを返した。


私はクッキーをジッと見てから、静かに言った。


「なに考えてるの?」


私は視線を上げる。


すると無表情の栄治も私を見つめていた。


無表情になると余計夏樹に似ている。


本当そっくり。


こげ茶色の瞳に、絶妙に下がった目じり。


夏樹よりも少しだけ太陽の匂いがする健康的な肌。


声だって今じゃあもしかしたら聞き分けがつかないくらい似てる。


栄治は私の手を優しく掴んだ。


あの夏祭りの時みたいに力任せじゃない、弱いくらいに優しい。


栄治はフッと笑って言った。


「俺が考えてることは昔から変わってない。心がどうやったら兄貴じゃなくて俺の方を向いてくれるかどうかだけ」
< 128 / 224 >

この作品をシェア

pagetop